【教師の鏡】イエローハット鍵山秀三郎さんのインタビュー記事

学級経営

【教師の鏡】イエローハット鍵山秀三郎さんのインタビュー記事

イエローハットの【掃除】といえば、教育現場でも道徳等で多く用いられることがありますよね。教師としても鍵山さんの掃除道は本当に見習うべき姿だと思います。今回は、そんな【掃除】1つで社会を変えた、

・鍵山秀三郎さんのインタビュー

について、元中学校教員であり、現在複数の大学で組織開発やチームビルディングをさせていただいている僕がまとめました。ぜひご覧ください。

【教師の鏡】イエローハット鍵山さんのインタビュー

──イエローハットを創業された昭和36(1961)年、28歳のときに社内のトイレ掃除を独りで始められたと聞きました。以来、トイレ掃除の活動を53年間も継続されています。きっかけは何だったのですか。
鍵山:いろいろな理由がありますが、大きな理由としては、ちょうど高度成長期に差しかかった頃で、社員の心が荒れていたんですね。カネを稼げばいい、今さえよければいい、自分だけよければいい、という風潮に世の中全体が急速に変わってきた。
創業間もない会社だったため、採用面接に応募してくるのは、履歴書に書き切れないぐらいたくさんの会社を渡り歩いてきた方が多く、心がすさみきっていたというのもあります。こうした社員の心を穏やかにするためには、まず職場環境をきれいにすることが大事だと思いました。汚い環境の中で、彼らに「ちゃんとしろ」と言ったってできるわけがない。まず私が環境をきれいにしてから、伝えるべきことを伝えていこう、と。その第1番がトイレ掃除であり、社屋の掃除でした。社屋といってもバラックでしたけども(笑)。まず社内を掃除して、やがて近隣周辺、取引先のお店の周囲やトイレ掃除をさせていただくようになりました。本当は社員にもやってもらいたかったけれど、誰もやりたがらないでしょうから独りで始めました。

──命令はしなかったのですね。
鍵山:命令したってやるもんじゃないですよ。また命令されてやることは、絶対に本物にならない。規則で決めたり、当番制にしたりしてもダメ。心からそうしようと思わないと身に付きません。

──社員の方々の反応は?
「掃除なんかしても無駄だ」「うちの社長は掃除しかできない」と陰で批判する者もいましたし、私がトイレ掃除をしている横で用を足していく者もいました。最初の10年間は私独りで掃除をしていて、手伝おうという社員は1人もいませんでした。

──よく続けられましたね。
鍵山:哲学者のショーペンハウエルがこう言っています。物事が成功するまでには3段階ある。第1段階は「嘲笑される」。なんだ、トイレ掃除なんかして、と。これが始まり。第2段階は「反対される」。誰もやれと言っていないのに抵抗するのです。その段階でバカバカしくなり、やめてしまう。こんなことやったってしょうがないという気持ちになる。でも、そこを乗り越えると、第3段階は、笑いものにしたり、反対したりしていた人がいつの間にか「同調する」。そんなこと、とっくにわかっているよ、と。そうして初めて物事は成功するとショーペンハウエルは言っています。

──社員の方々がトイレ掃除をするようになったのですか。
鍵山:はい。10年を過ぎた頃から、社員が1人、2人と手伝うようになりました。ただし、今日やったと思ったら明日はもうやらないという感じで波はあります。それがだんだんと浸透していって、20年を過ぎた頃には、大方の社員が掃除をやるようになった。社内だけでなく、近所の道路など広い範囲で掃除するようになりました。

──掃除が社内に根付いていって、ビジネスの面で何か効果はありましたか。
鍵山
:お客様からの信頼が絶大になりました。よその会社の社員とは全然違うというふうに、お客様が見るようになった。たとえば、うちが商品をお客様に納める際に、普通は商品と伝票に記載された数が合っているかをお客様がチェックするのですが、うちはノーチェックです。うちの社員はごまかしたりしないという信頼があるからです。みんなが掃除をやるようになってからは、外部の会社から「掃除の仕方を教えてほしい」と依頼が来るようになりました。最初は中小零細企業が多かったのですが、だんだん1部上場会社の社長が幹部社員を連れて来るようになった。

──社員教育として掃除を導入しようと?
鍵山:そうです。もう何をやってもうまくいかなくて、人づてに掃除がいいそうだと聞いて、半信半疑でやってくる。ある会社の社長は、会社をよくするためにいろいろな研修に行っては、次々と会社に導入したけれども、どれも成功しなかった。でも、掃除を始めたら成功した。この掃除活動は、自分の意志でやり始めると、がぜん、心が変わるんですね。

──どういうふうに変わるのですか。
鍵山:掃除の効用は大きく5つあります。ひとつ目は「謙虚な人になれる」。私はこれまで何万人も掃除をする人を見てきましたが、掃除をやっていたら傲慢になったなんて人はひとりもいません。例外なく謙虚になります。謙虚になると、自分が接している周囲の人たちの対応が変わってきます。
2つ目は「気づく人になれる」。ぱっと見て、この便器はきれいだなと思っても、いざ便器に取り組んでみると、ここも汚れている、あそこも汚れていると、いろいろな汚れに気づきます。すると、今までは床にゴミが落ちていても平気だったのが、気になるようになってくる。これまでは見えなかった細部がよく見えるようになります。3つ目は「感動の心を育む」。自分でトイレ掃除をすると、きれいになったなあと実感します。この実感が感動なのです。よくコンサートに行ったり、お坊さんの話を聞いたりして「感動した」と言いますが、あれは感動しているのではなく、興奮しているだけです。感動と興奮は違う。興奮はすぐ冷めます。お坊さんの話を聞いた帰り道で、もう人を押しのけている。そういうのを感動とは言いません。

──トイレ掃除の感動は持続するのでしょうか。
鍵山:感動しやすくなって、些細なことにもありがたいと思うようになるのです。たとえば、人がエレベーターのドアを開けて待ってくれていたといったことにも、ありがたいと感じるようになる。4つ目は「感謝の心が芽生える」。感動と感謝は一緒です。感動しない人は感謝しません。5つ目は「心を磨く」。心を外に出して磨くことができればいいですが、できないでしょう。だったら磨けるものを磨く。間接的に自分の心を磨くことになります。トイレというのは1日に何回も見るものですから、それがきれいだと、見ている自分の心もきれいになっていきます。つまり、いつもゴミだらけの汚い環境にいる人は、心の中も同じ状態ということです。

──鍵山さんの掃除活動のゴールは何ですか。世界中を美しくして、人々の心がきれいになることでしょうか。
鍵山:世の中は争いごとに満ちています。戦争だってもとは人の不満から始まり、それが増幅していって起こるのですから、ものすごいエネルギーです。もし、戦争に向けるエネルギーを掃除のほうに向けたらすばらしいでしょう? 自分のエネルギーの向け方が重要なのです。争いや武器に向けるのか、掃除に向けるのか。掃除に向ければ、地球がきれいになり、心も平和になります。昨今、自分の利益になることしかしないといった風潮が見られます。しかし、そういう人間の人生がよくなったためしはありません。もっと社会や国家に目を向けて、少しでも自分の時間や手足を使わないと、世の中はよくならない。私から見ると、今の日本人は寿命を延ばし、長生きすることには一生懸命ですが、そんなことは自分が決めることじゃないですよ。いくら90歳まで生きようとしたって、若くして亡くなる人もいます。そんな自分で決められないことを一生懸命やるより、自分が決められることに一生懸命取り組めばいいのにと思います。どう生きるかは自分で決められます。

──鍵山さんは現在、81歳にして世界中を飛び回ってトイレ掃除をされています。結果的に、健康にもいいのかもしれませんね。
鍵山:いいでしょうね。朝、公園の掃除をしているときに、マラソンをしている人が通っていきます。はぁ、はぁ、と息を切らして熱心ですが、それは自分のことだけに熱心とも言えます。熱心な人であっても、立派な人とは言えない。もしその人が、マラソンもするけど落ちているゴミも拾ったら、立派な人になるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。鍵山さんの器の大きさ、行動力、継続力が伺える内容だったと思います。このブログでは、若い先生方を応援するために作成したブログです。学級経営、学級通信のネタ、生徒指導で大切なことや取り組み等をご紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。

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